FULLERVISHー蜜売家枇薬

創作落語の同人グループ・蜜売家一門より、蜜売家枇薬の雑記録です。

かわいいかわいいわたし

でろんでろんに脳みそを溶かして、

そこに砂糖とキャラメルをたっぷり加えましょう。

腹の黒さはすべて飴でコーティングしましょう。

チョコレートで笑顔の口元を描いて、

マシュマロで目をつけたら、

かわいいかわいいわたしの完成です。

わたしの髄液は水飴。

わたしの血液はりんごジュース。

わたしの骨は飴細工だし、

わたしの爪は落雁だ。

わたしの胃はクッキー。

わたしの肝臓はフィナンシェ。

わたしの腸はくずきり。

わたしの腎臓はグミ。

かわいいかわいいわたしを召し上がれ!

甘い匂いにつられてやってくるのは飢えた者たちだ。

夢中でわたしにむしゃぶりついて、

夢中でわたしにかじりつく。

わたしはそれを笑って受け止めて、

ひとつずつ。

ちょっとずつ。

わたしの身体を差し出すの。

だんだんわたしの身体はなくなるけれど、

いいの。

また作るから。

脳みそをでろんでろんに溶かして、砂糖とキャラメルをたっぷり加えて、

腹の黒さはすべて飴でコーティングして、

チョコレートで笑顔の口元を描いて

マシュマロで目をつけて、

あれれ。

肝腎のなにかが見当たらない。

かわいいかわいいわたしにならない。

わたしの髄液は水飴だし、

わたしの血液はりんごジュースだよ。

わたしの骨は飴細工だし、

わたしの爪は落雁だ。

わたしの胃はクッキーだ。

わたしの肝臓はフィナンシェだ。

わたしの腸はくずきりだし、

わたしの腎臓はグミのはずなんだよ。

はずなのに、

足りないものはないはずなのに、

肝腎のなにかが見当たらない!

ああ、そうか。

心を食べられたんだ。

一番甘くて、

一番苦い。

チョコレート菓子の心を、

食べられたんだ。