FULLERVISHー蜜売家枇薬

創作落語の同人グループ・蜜売家一門より、蜜売家枇薬の雑記録です。

地獄先生3

でも、先生のことがどれだけ大好きでも、わたしは先生とあと数ヶ月もすればお別れです。受験勉強も大詰めです。少しでも試験でいい成績をとって、少しでも先生に褒めてもらいたくて、でももし本当のことを言ってもいいのなら、中学生なんて身分をかなぐり捨てて今すぐにでも先生と深い仲になりたい。でも、愛妻家の先生が嬉しそうに奥さんのことを話している姿をわたしが壊すなんて、一番望んでいないことなのです。

「先生の奥さんまで愛してます」

これがわたしの本音です。わたしが好きなのは「先生」そのものではなくて「家族を愛している先生」。だからわたしは、先生の奥さんも、お子さんも、もちろんみんなみんな大好きで、愛していて、それがわたしのすべてだと言っても過言ではないのです。

だから欲張った、わがままなことを言ってしまえば、わたしが先生に望むことは、先生が奥さんを愛するようにわたしを愛すること、先生がお子さんを愛するようにわたしを愛すること。

けれど、この望みは本当はわたしの望みと相反するものでもあって、先生に奥さんやお子さんを裏切るようなことはしてほしくないし、先生のご家庭が壊れてしまうようなことがあったらそれはわたしにとって死ぬよりも何よりもずっと怖いことです。