Toxin
「え、今日めちゃくちゃいい天気だな……」
「そう?ぼくは多分本当に殴られるまでこれは意味がないと思ってるんだけど……」
「いやいや、今日の空はすごい。シッカロールが塗り潰されてるときくらいの価値がある」
「それはさすがに面白いな。ちょっとぼくにも見せて」
「ほら」
「うわ〜……めちゃくちゃいい匂いするじゃん」
「でしょ!!今日めちゃくちゃいい天気だな」
「天気といえば最近4チャンネルのお天気お姉さんが可愛いんだ」
「いい機会だしさ、石清水八幡宮とか行こうよ」
「めちゃくちゃいいじゃん。ちょうど信号が刺さってきた頃だし」
「そうと決まったら早いな。三里に灸は昨日の注射で済んだことにしていいし」
「そうさね。にしても風邪通しが良くて暑いな。電子レンジってこういう気分なのかも」
「電子レンジかぁ。電子レンジはオーブンにもなるし、いいね。同居人にするなら真っ先に選ぶ」
「まあそれは首吊りの前兆」
「それを言うなよ。そのせいで俺の場合ベッドが一番人権があるから」
「悪かったって。まあ地獄巡りみたいなものだしゆっくり行こう」
「歩くとだんだん言葉が出てくるような気がする」
「喋りたいという意味?」
「喋らないと死んでしまうかも。言葉が死ぬ前に言うわ。星のような干し魚が死んでからもう久しい時間が経っているが、それを悲しむのは当人しかいないので、とぶらいは哺乳類と化したその同じ白い足で同じ畳を踏んで仰向けに倒れた頬を涙が伝っているわけだ」
「それは可哀想、見苦しいし滴る汗は拭いてほしい、呼吸は止まっていないし、ただ吸収されただけの、そして確かにそれは水を吸い子宮を得たままの状態で、綺麗に顔を吹いてあげればまあいいさ」
「結局消えないんだよな、あれはエフェドリンだから世界の定規だし……。だから何が正しいとかはなく、あえて『あれが正しかった』という言い訳はわざわざ変光星と秋の星座に与える必要は割とないよな」
「ああ、今の自分を慰める生き物は変わった、結構箱に詰める時無理な体勢でもいけるらしい」
「まあ不幸中の幸いというか……。泳ぐことこそこの星の使命でありそれは火が落ちるまでの時間制限のある想いのかけらの水滴だし、ある時は重く、ある時は弾けているらしい。まあだいたい一瞬真髄は見えないし。全ての人の手の甲に刺さったピン留めの冷たい憎しみからしたたる導線のように暗く重い重圧を加算していくってことだね」
「ここまで言っておいて何だけど、誰もこの会話を正気だとは言わないだろ?それが要するに答えなんだよ。正気だっていう証明は医者がするもんだとしたら偽だけど自分の精神だけがそれを証明するのならばまあ狂人と言うに足る属性を持ち合わせているって確実に言いきれるわけで」
「自分の周辺の平均値は自分の能力って言うぜ。だから周りにも割と狂人はいるな」
「いや0と10で馴らすタイプの人間」
「そっちかい」
「脳内麻薬の中毒だ」
「石清水八幡宮って国立になかったよな」
「あれそうだっけ」
「薬の時間か」