FULLERVISHー蜜売家枇薬

創作落語の同人グループ・蜜売家一門より、蜜売家枇薬の雑記録です。

人には人のそれぞれの価値観がありわたしにとってのそれは薄暗い蛍光灯から始まっていた あまり時間はなかった わたしの価値観がひっくり返るのとわたしが一番大事だったものが失われるのは全くの同時のようだった 価値観のすべてはそこにあった ただこの薄暗い蛍光灯の下で消えていくのを待つだけの私の力ではどうやってもどうにもできないそれだけでわたしの世界は明るくなっていた 蛍光灯を取り替えるよりも臓器を入れ替えることの方が余程難しいなどということは考えなくても分かることだしもちろんのことわたしが祈ってどうこうなるものでもなかった だからわたしはわたしの世界の価値が恐らく消えていくのだと 消えていってしまうのだと 消えてしまったのだということを祈りながら察することしかできず 新しい価値観が薄暗い蛍光灯が明るい蛍光灯に取り替えられるように生まれるんということから逃れられなくなっていた わたしが万能の天才であったなら恐らく最後に太陽の光をこの薄暗い手術室の廊下に引き入れるための導線を創ったと思う 最期に見るのが新しくなる前のわたしであるならばそれは明るければ明るいだけ安心できそうだ